旅行

ひとすじの道② 

旅行

2020年 11月22日 自宅~三河東郷駅(30㎞ 6h)
北へ、それは単純なことだ、家の前の道をただただ北上する。道は柿の木街道と呼ばれ、11月の終わりには、道のあちこちに、葉も実も朱色に色づいた柿畑が続く。青い空の下、燃えるような朱色は、丘を登り、あちこちで、白い軽トラが遅い収穫を急いでいた。
家から2時間も北に歩くと、もう豊橋市と新城市の境 この道のわきに、阿部農園がある。
もう、20年以上も前になるだろうか。ここの農場主は昔、私の上司だった。当時の田舎の自治体には珍しく、女性の課長だった。きっぷが良く、動物に優しい人だった。ある日、課長は、野良猫を助けるといって、我々若手に段ボール箱を持たせ、職員駐車場の河川敷に向かった。
シャーという威嚇の声と体を丸めて攻撃態勢に入っている猫を前に、我々若手は情けないぐらいしり込みし、見かねた課長が藪に突入していった。やがて、段ボールを大切そうに抱えて藪から出てきた課長、手からは血が流れていた。
あんなに情けない思いをしたことはなかった。あれから、課長は定年退職して、柿の木を大切に育てる農場主として、誇り高く、この土地で生きている。あの時の傷は、課長の腕にまだ残っているのだろうか。
情けない男どもを軽蔑もせず、保護した猫に柔らかな笑顔を向けていた課長、いつも陽だまりのような人だった。人間の優しさと強さとは何か、教えてくれたような気がする。

 

陽だまり

たとえ
多くを語らなくても

たとえ
多くを伝えなくても

ただ、受け止めるだけで
やわらかな陽だまりになれる

そんな優しさに
私は なりたい

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