2020年11月28日 三河槇原駅~中部天竜駅(28㎞ 6h)
三河川合駅までの穏やかな道、道の両側には一面の冬イチゴが赤いルビーのような実をいっぱいに光らせていた。冬イチゴは、初夏に熟すモミジイチゴや苗代イチゴと同じバラ科の木苺で、木苺には珍しく、冬に熟すことから、この名がある。その甘さも、酸味も、しっかりした味で、木苺類の中で、私の一番のお気に入りだ。
娘と孫が松本から帰ってきたら、いっしょに摘み取って、ジャムにしよう。そう思いながら柿平駅のわきを進むと、道のわきの藪の吊り橋のようなものに気が付いた。
この吊り橋はもう長いこと放置されているのか。板はあちこちで剥げ落ち、私の体重ではひとたまりもないと思われた。写真をとろうとスマホを構えた時、突然、脳裏に鮮やかな記憶がよみがえってきた。私はこの吊り橋を知っている。幼稚園の頃だったか、ここをわたって、川向こうの親父の知り合いの家によく遊びいった。この駅、この道、この吊り橋、そして、山の家で遊んでくれた年上の友達たち。藪をかき分けて川岸に近づくと、吊り橋のむこうに朽ちたような人家が見える。なんとかわたって見たいと思ったが、吊り橋の板は、人の重さを支える以前に、そこにあること自体が、奇跡的な状況だった。あの時、この山里で遊んでくれた友達たちは、いまどうしてるだろうか。
やがて、三河川合駅から、東栄駅まで、坂の道をずんずん高度を上げていく。東栄町駅内のちゃちゃカフェで一休み、この先の道のことを考える。
左に行けば、茶臼山の山麓をたどり、新野峠を経て南信州に入る国道151号線の道、信州に入る王道の道だ。一方、右に行くと天竜川沿いの静岡県の道、人家は乏しく、佐久間ダムや、青崩峠など国道が途切れている場所もある。自分では迷っているつもりだったけど、心はもう決まっていた。国道を右に折れ、天竜川を目指す。天竜川は遠く諏訪湖を源とする川だ、諏訪湖はたくさんの思い出が残る場所、あの湖につながる道をたどっていこう。歩みを進めるたびに、湖面の風に吹かれてたあの時のことがよみがえる。
青い空
青い空が好きだ
どのくらい、泥にまみれても
空に向きあえば、心は浄化され
青に包まれ、いつしか一つになる
広い海が好きだ
どのくらい、心が折れても
風に想いをあずければ、瞳は明日に向かい
波が、背中を押してくれる
一輪の花が好きだ
どのくらい、吹雪の中を一人歩いても
一輪の花が、心にあれば
春はめぐり
力強く、未来を歩んでいける
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